レザークラフトをはじめたばかりの頃は、革選びのポイントがわからなくて悩むことが多いことでしょう。
革素材自体は、ネットで簡単に購入することができますが、実物を見ないと少し不安ですよね。
東京の浅草や浅草橋のレザーショップまで直接出向いたとしても、革選びの基準がわからなくては困ることもあると思います。
レザーショップの店員さんが、一緒になって親身に探してくれればいいのですが、実際にはそうもいきません。
結局は、店員さんに勧められたものをそのまま購入するのが現実ではないでしょうか。
そこで本記事では、レザークラフト初心者に向いている革の選び方を、革の種類や加工に分けて、くわしく解説していきます。
レザークラフト初心者にオススメ素材とは?
レザークラフト初心者にオススメの素材は【牛革】です。
なぜなら、流通量がダントツに多く、手に入れやすいからです。
また、初心者にも加工しやすいように、はじめから革の厚みを良い具合に調整されているものが多いところもオススメのポイントになります。
一方で、羊革や山羊革、豚革も流通量が多く、比較的手に入れやすいのですが、初心者向きではありません。
なぜなら、いずれも革の厚みがうすい素材が多く、柔らかいことも特長なので、初心者にとっては裁断や縫製(おもに手縫い)加工の難易度がグンと上がるからです。
しかし牛革と一括りにしても、なめしや仕上げの加工方法などによって、さまざまな違いがみられます。
では一体、どのように良し悪しを見分ければいいのでしょうか?
次に牛革選びのポイントをお伝えします。
【牛革】革選びのポイントは5つ!
実は、レザークラフト初心者向きの牛革を選ぶポイントは、具体的に【5つ】あります。
- 牛革の部位
- 革の厚み
- 植物タンニンなめしの革は◎
- イタリアンレザーは◎
- 型押し(エンボス)加工の革は△
では、具体的な牛革の部位や加工、原産地について、くわしく解説していきます。
1.牛革の部位
牛革の部位では【ベンズ(背中からお尻)】がオススメです。なぜなら、革の繊維が締まって伸びにくく、耐久性にも優れているからです。
一方で、ベリー(お腹)の部位はオススメしません。
理由は伸縮が激しく、耐久性に劣るからです。
では一体、牛革はどのような状態で流通しているのでしょうか?
国内の専門市場では、牛革の背筋を境にして左右半分にカットした「半裁(はんさい)」の状態で流通しています。
平均でも「200~250センチ×100センチ」と人間よりも大きなサイズですので、初心者向きではありません。
なのではじめは、半裁(はんさい)ではなく、小さいサイズにカットされた【ベンズ(背中からお尻)】のハギレからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※牛革の部位がわからない場合には、上下左右に引っ張って、簡単に伸縮しないものが良いですよ。
2.革の厚み
革の厚みは【1.5ミリ以上】の素材を選びましょう。
なぜなら、一般的なうすい革(1.0ミリ以下)は柔らかく、初心者には裁断や縫製(おもに手縫い)作業が難しくなるからです。
革の厚みは、革漉き加工によって、あとからうすく調整することができますので、はじめは少しでも厚いものがベターといえます。
一般的な革小物に適した革厚は「1.0ミリ~1.5ミリ」です。
ちなみに私も、革小物を作るときの革厚は1.0ミリ~1.5ミリの間で調整しています。
欲をいえば、革厚が2.0ミリ以上の革を手に入れたいところですが、革が厚いものほど価格が高い傾向にあるので、そのあたりはかけられるコストによります。
革の厚みが製品の出来栄えを左右することもありますので、このあたりは妥協しないでくださいね。
※カバンやベルト(革小物以外)などは、最低でも2.0ミリ~4.0ミリの革厚が必要です。
3.植物タンニンなめしの革は◎
レザークラフト初心者には【植物タンニンなめしの革】をオススメします。
植物タンニンなめしの革は、通称【ヌメ革】と呼ばれて馴染みがあるかもしれません。
特長は、適度な革の厚みとハリ(弾力)があるので、特にレザークラフトの手縫い作業にはオススメです。
ちなみに、革の「ハリ」を例えるなら、うどんのコシに近いかもしれません。
「コシがある=歯ごたえがある」と同じように、適度な硬さに弾力が加わった状態です。
さらに、植物タンニンなめしには「革を育てる愉しみ」もあります。
「革がアメ色に変化した」と耳にしたことがあるかもしれませんが、経年変化も醍醐味のひとつです。
他にも、植物タンニンなめしとは対象的な「クロームなめし」の革も流通していますが、一般的には革厚がうすく、柔らかいものが多い傾向がみられるので、初心者には不向きでしょうね。
※クロームなめしの革がアメ色に変化することはありません。
4.イタリアンレザーは◎
【イタリアンレザー】は、レザークラフトとの相性が抜群です!
なぜなら、イタリアンレザーは先にオススメした「植物タンニンなめしの革」と同じ性質を持ち合わせているからです。
さらに国産革よりも、オイルがよく染み込んでいるので、手縫い作業がスムーズではかどります。
コバ(切り口)の仕上げも簡単キレイで、作業中にうっかり表面をひっかいても、少しくらいなら指で撫でて元通りです。
一方で、価格が高いからと敬遠されがちですが、革キズが少なく状態が良いのものが多いので、かえってコスト削減につながることがあるかもしれません。
※国産の革と比べて、発色が鮮やかでカラーバリエーションが豊富なので、作っていて楽しいですよ(←これはあくまでも個人的な嗜好ですが^^)
5.型押し(エンボス)加工の革は△
レザークラフト初心者には【型押し(エンボス)加工の革】はオススメしません。
なぜなら、型押し加工によって、すでに革の吟面(表面)が傷んでいるからです。
型押し加工は、高圧プレス機を用いて、図形や模様を施した型をあてて熱と圧力を加えるので、革の吟面には相当な負担をかけています。
傷んだ革は長持ちしませんので、作業に慣れていない初心者には向いていません。
さらに型押し加工は、植物タンニンなめしの革のような経年変化を愉しむ革には不向きとされています。
その理由は、クロームなめしの革にデザインを施したり、革キズを隠すために用いられることが多いからです。
※ちなみに、革の吟面に名前などを刻印する焼印とは異なります。
まとめ
レザークラフト初心者にオススメの素材は、ズバリ「牛革」です。
ネットでもレザーショップでも、革選びのポイントは同じです。
「牛革の部位は背中からお尻の『ベンズ』、革厚は『1.5ミリ以上』の『植物タンニンなめし』『イタリアンレザー』なら尚良しです」
植物タンニンなめしの革には「革を育てる愉しみ」もあります。
本記事で紹介した5つのポイントが、今後の革選びの参考になればうれしいです。
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